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おしらせ

ひさびさですが、ブログ復活させることにしました(*´ェ`*)ノ
まだつぎのを書いてないので、書きあがったらアップしますです。

とりいそぎお知らせまでw

れんらく。

誰も見てない気がしますが・・・。

えっと、キャラを封印することにしました。
お世話になった方々、今まで本当にありがとうございました。
一人ひとりにご挨拶したいので、とりあえず皆さんにご挨拶が終わるまでは時々きます。

ブログもこれで終了し、暫くしたら消去しようと思います。
またどこかで。

【5】誇りし弓を

転生したりしてたら一ヶ月半も空いちゃったよ・・・。
そしてだんだん小説が長くなる・・・。

今回はエルフ族の衛兵メレオナさんが主人公です。
エルフ族が樹下の都へ行って最初に会う人だから、覚えてる人も多いのではないでしょうか。
35と46のクエストにも出てくるしw

ちょっと今回オリジナル要素強いですが、まあぐったりと読んでいただけるとw
むきゃきゃ( ̄∇ ̄*)



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その手は、暖かかった。
残照を背に身をかがめる肢体は美しく、差し出された細腕は、さながら未来へと続く道のようだった。そして何よりも、白く皇かな指先には、確かに暖かな希望の火が灯っていた。
だから少女は手を伸ばした。勇気を振り絞り、夜の帳に彩られた獣道に決意の一歩を踏み出すように。あるいは、夢に出でし銀翼の堕天使に、妖しく導かれるように。
指先と指先が、掌と掌が、降り注ぐ陽光の中そっと触れ合う。
齢にして千を数える大樹の下で交わされた、確かな誓い。
その瞬間、少女は戦士となった。


「入りなさい」
古びた木戸を数度叩くと、その声はすぐに飛んできた。耳慣れたソプラノが耳朶を撫で、大きな安心感となって胸に広がる。この声を聞くのは幾月ぶりか。戻ってきたんだ。そんな思いが、僅かに気持ちを昂ぶらせた。
失礼します、と一声掛け、静かに戸を押し開く。視線をやや下に向けたまま部屋の中央に進み、そっと跪いた。
「樹下警邏第三部隊長メレオナ、ただ今帰還致しました」
懐かしさに弛緩しめる感情を低い声で抑えつけ、メレオナはお決まりの文句を告げる。絨毯の長い毛足が、膝先をくすぐって心地よい。
「よく戻りました。顔をあげなさい、メレオナ」
頭上に注がれる落ち着いた音色。小さく答え視線を上げると、豪奢な木机の向こうで、赤髪の長はとても柔らかな表情をしていた。やや切れ長の涼しげな瞳に、高く通った鼻筋。磁気を思わせる白肌と、暗みがかった赤髪が織り成す鮮やかなコントラスト。四種族長中唯一の女性であるエルフ族の長は、重ねた齢を伺わせぬ美貌を今日も保っている。蟲惑的に濡れた唇から言葉が紡がれ、メレオナは自身が見とれそうになっていたことに気がついた。
「お前の帰還に先んじて、祖龍の長老から書簡が届いています」
長は机上の小さな封筒を取り上げ、指先で軽く振ってみせた。
「書簡、ですか・・・?」
メレオナはこの数ヶ月、眼前の長より命を受け、樹下の都より遥か東方の祖龍の城に赴いていた。不在の間に届いたらしい書簡への言及に、何か粗相があっての指摘かと、思わず身が固くなる。
それに気がついたのか、長は少し笑って、言った。
「主題は来月の四種族会合の仔細についてです。その中で、お前について少し触れた箇所がありました。読み上げましょう」
細い指先が羊皮紙に踊り、形の良い唇が幾分固めの文章を音色へ変える。長い睫が揺れた。
「今刻の怨霊軍団の強襲に際し、ご尽力いただいた貴国のメレオナ殿ですが、当城弓兵隊における指揮統率、まさに辣腕と言う他なく、弓士としてのお力は言わずもがな。付き従った者に聞けば、何と怨霊統帥が片の眼を一里※の先から射抜いたとのこと。四種族会合の折にはぜひとも長殿にご帯同いただき、当城弓兵隊への再度のご指導願いたい」
だそうです、と付け加え、長はまた微笑む。思いがけず過多な賛辞に、頬が朱に染まるのが分かった。
「良い戦士になりましたね。メレオナ」
「あ・・・」
長の言葉に、思わず声が漏れる。嬉しかった。他の者が聞いたなら並の賛辞にすぎぬその言葉。メレオナには、何よりも意味のあるその言葉。誰にも言わず、ずっと目標にしてきたその言葉。目頭に、にわかに熱いものが込み上げた。
「さあ、堅苦しい話はここまでです。長旅で疲れていることでしょうし、兎に角今日はゆっくりと休んで・・・」
旋律のような優しい響きが一瞬途切れ、続けられた言葉にはやや、苦笑が混じる。
「まったく・・・。どれほどに強くなっても、泣き虫だけは直らないのですね」
泣き顔を見られまいと再び足元へ向けた視線。ぼやけた視界に、静かに影が落ちる。
目の前に両の膝をついた長の手が、メレオナの背にそっと伸びる。優しく、抱きしめられた。
「あなたは本当に、頑張っていると思います。誇ってよいのですよ」
耳元で囁かれるどこまでも暖かな言葉。大粒の雫がまた一つ、瞳に溢れた。
抱きしめられながら、長の胸元で小さく頷く。
「はい・・・。母さん」


お世辞にも、幸福な生い立ちとは言えなかった。
母の名はとうに記憶になく、父の名はもとより知らない。
幼くして大樹の下の捨て子となった少女は、あの日ただただ、泣き続けていたように思う。
のしかかる現実を拒絶し、己の無力を呪いながら、溢れ出す悲しみをひたすらに涙に変えて。
涙し、涙し、また涙し。どれほどに泣き疲れても、悲しみの螺旋は決してその回転を止めようとはしなかった。
幼子(おさなご)の鳴き声に気がついた赤髪の女性が、美しいその手を差し伸べてくれるまでは。
「強くなりなさい」
彼女は言った。
「これまで愛を注がれてこなかったのなら、その分これから、周囲に愛を注ぎなさい。誰よりも皆を愛し、誰よりも今を愛す。愛なき悲しみを知るあなただからこそ、それはできること。エルフ族の誇りを胸に、そんな・・・」
一呼吸。
「そんな、良い戦士になりなさい」
優しげに奏でられた、今と変わらぬソプラノが、耳慣れたオルゴールの音色のように、小さな胸の奥深くに沁みこんだのを覚えている。
「いきましょう。あなたの居場所へ」
その女性に手をひかれ、大樹並び立つ都を回った。
道行く人々が皆、優しい言葉を掛けてくれた。
木の香りに充ちた大きな家で、暖かなスープを飲み干した。
一度は凍てついた悲しみの氷壁が、薄味のスープの熱に溶けたのか、大粒の涙がこぼれては止まらなかった。
「お名前は・・・?」
毛布に包まり、暖炉の熱にまどろみながら、女性にそう聞かれた。名も答えられぬほど幼くはなかった。それでも、躊躇した。悲しみに彩られたその名を口にすることで、目の前の仄かな幸福が、もろくも瓦解するような気がした。
困りましたねぇ。黙り込む少女に、赤髪の女性は小首をかしげ、やがてこう言った。
「では、ここでの名前を決めてしまいましょう。呼び名がないと、不便ですからね」
しばしの沈黙。そして。
「メレオナ、というのはどうです?エルフ族の古い言葉で、愛せし者、という意味です」
慈愛に満ちた、美しい女性の笑顔。
数日の後、共にくらす彼女が、エルフ族を束ねる長であると知った。


草原を駆ける。
足元に纏う白鷹の力。愛用の弓を握り締め、目標地点へ最短距離で。
耳を打つ怒号が、徐々に大きくなっていく。
辿り着いた。
多数の弓兵と精霊師に囲まれた、巨大な影。
豪雨のように降り注ぐ矢嵐をものともせず、巨大な腕を振るう獰猛なその姿。数人の弓兵が、軽々と吹き飛ばされるのが見えた。
彼女の姿に気がついた兵士達が、次々と此方を振り返る。幾ばくかの安堵が、それぞれの表情に見えた。
一瞬止んだエルフ達の攻勢をいぶかしんでか、悪魔の視線がのそりと彼女を捕らえる。
怨霊統帥ジェノサイド。祖龍城の強襲に失敗した怨霊軍団が長。樹下の都への帰還から3日目、平和な日常はいとも簡単に破られた。
樹下の都へ怨霊軍団強襲の報を自室で聞き、おっとり刀で飛び出した。
「ふ・・・」
全身がざわめき、血が昂ぶる。巨悪の眼差しが、誰だと問うているように見えた。
「私はメレオナ。樹下警邏第三部隊が長にして、誇り高きエルフ族の戦士、メレオナ!」
守り抜く。愛する仲間を。愛する都を。愛する母を。
番えた矢に胸いっぱいの思いを乗せ、彼女は今日も、弓を引く。

-了-
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※一里…約500メートル。日本では約3.7キロを指すが、中国のゲームなので中国基準。